先日蒲田に新しくオープンしたギャラリー「アート / 空家 二人」に行ってきました。美術手帖にも掲載されていましたが面白いシステムで作品を販売しており、興味深く観賞させて頂きました。
今回、作家さんは総勢15名とかなりの人数で、作品は絵画・彫刻・映像、また、観賞者とダイレクトにコミュニケーションを取れる体験型の作品まで多岐に渡っていましたが、一軒家をまるまる使用しており、スペースに余裕を持ちながら観賞する事ができます。
さてさて、今日は出品作家の一人でもある坂本夏海さんの作品の事を書かせて頂きたいと思います。今現在スコットランドに在住の坂本さんは”魔女狩り”に紐づく歴史や女性史を題材とした作品を制作しています。インタビューや対話を通して人々が持っている体験や記憶を自分自身に沁み込ませ、過去・現在・未来と細く見えない糸で紡がれているタイムラインに漂っている物語の持つ瑞々しい映像をビデオやドローイングに投影しています。
今回の映像は坂本さんが海に石を投げ入れている映像が映し出されています。(こちらのインタビュー記事にそのひとコマが記載されています)どうして石を投げ入れているのだろう。。?と思ったら遥か昔、魔女狩りが行われていた時代にスコットランドのビュート島という所で海に石を投げ入れた事により「嵐を呼んだ」「船を沈没させた」として魔女として告発されてしまった女性達がいるという歴史がインスピレーションとなったようです。映像の隣のドローイング達は作家自身がその土地で出会った人達との対話や感じた事が綴られています。
こんな歴史があったのかい。。!という事を知れるのは勿論だけど、今この時代を生きる私達はどれもそれらを体験する事は不可能だし歴史はいつも曖昧に物を語ります。しかし、今私達が眼にしているもの・感じるもの、そこには過去からのメッセージが散りばめられていて現在にまで継承されているものもあり、そのメッセージを通して今の私達の生活をまた違った角度から見つめ直す事ができると思うのです。
人は自分の生活が脅かされるのではないかと不安と恐怖を抱くと攻撃する。嵐が起き、船が沈没した理由、それは眼に見えないものだから眼に見える何か、にフォーカスが当たってしまった歴史とも言えるのかな、とも思いました。それは現行で起きている情勢とも似ている所があって、眼に見えないウイルスを攻撃するより、人を攻撃するニュース等が飛び交う度に憂鬱になる事が多いです。自然のものであるウイルスを攻撃。。って言い回しもおかしいんですけどね。
でもこうして石を海に投げ入れても捕まらない現代(少なくとも捕まった事がないワシは浜っこです。干あがったわかめを食べて注意されたことはあったけど。。)になっているということは大きな時代の流れの中に少なくとも人々の意識の変容があったという事です。
私はその点でこの作品から見える過去と現在を結んでいる分厚いページの中で何がきっかけで意識がシフトしていったのか?という事にも興味を持ちました。でもおそらくそれは指をパチン、とさせれば切り替わる歴史ではなくて教科書には載っていない語られることのない誰かの小さな行動が物語を生み出しその波紋を呼んだのかもしれません。
「自分のこの言葉や行動が何になるんだろう」と思う事があります。でも、誰か一人が意識を変える事によって伝染していくグッドバイブレーションというのは存在しうるのだと信じていきたいです。そういった意味ではこのギャラリーの新しい試みも応援したいと思いますし、皆が色んな角度から思考を動かしてアートを楽しめる場が出来て言ったら良いなと思います。そしてここでは書けませんでしたが、面白い作品を出品されている素敵な作家さん達が沢山いらっしゃいました!
この作品はどうやって販売するんだろう。。と考えるものもあります。今は少し現地に脚を伸ばすのが難しい時期でもありますが、体験できる方は現場で体験してみてください。また、WEBでも写真で作品が閲覧出来るみたいです。
NITO01
2020年7月17日から8月10日(11~19時)
アート/空家二人
東京都大田区蒲田3-10-17
火・水・木曜休館
観覧無料
HP: https://nito20.com/